尿道炎は、尿道内に炎症がおこる疾患です。性行為などによる細菌や微生物の感染が主な原因となりますが、尿道炎のみを診断されるのは、男性が中心となります。これは、男性と女性とで生殖器の構造や位置関係に違いがあることが考えられます。

女性は尿道が短く、菌などが侵入しやすいため膀胱炎(ぼうこうえん)になりやすいのです。女性の場合は、尿道炎よりも膀胱炎になることが懸念されます。膀胱炎と尿道炎が併発することも少なくありません

尿道炎は感染症からの症状でありますので、抗生物質などの薬剤を服用すれば治すことができます。生殖器に関する疾患ということで、医療機関を訪れるのに抵抗があり、治療が遅れることになりがちです。

尿道炎を治すためには、尿道炎の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、尿道炎を治したい方のために、尿道炎の症状・原因・治療について詳しく説明しております。

1.尿道炎とは

尿道炎とは、主に男性に起こりうる性感染症です。尿道内部で炎症を起こし、排尿の際に痛みやかゆみなどの感覚をともないます。また別の症状として、外尿道口から膿(うみ)が出てくる場合もあります。

尿道炎の原因となる感染源の菌には種類があります。淋菌、クラミジアが多数を占めますが、それ以外にも複数の菌が存在します。複数の菌が存在しているケースは、全体の2割から3割になります。

感染している菌を特定するには、尿検査を行います。顕微鏡で観察する、尿中にある白血球を確認するなどします。また「核酸増幅法」という検査も実施します。場合によっては、尿検査の前に分泌物を採り、分析することもあります

菌によって発症の仕方が異なり、また適用する薬剤も違ってきます。尿道炎は、たいてい内服薬の処方だけですが、感染している菌が複数に及んでいたり、また感染の度合いが強い場合は、注射や点滴も用いられ、時間を要することもあります。

2.尿道炎の症状

尿道炎の症状は、感染源のタイプによって違いがあります。淋菌とクラミジア、それ以外の雑菌によるものがあります。発症の特徴や症状について、下記にまとめてみました。

1)淋菌性尿道炎

症状があらわれるまでの潜伏期間は、3日から1週間程度です。発症は急性的で排尿の際に痛みが強く出ますので、異変に気づきます。尿道からの分泌物として、黄色みがかった膿が出ることがあります。

2)クラミジア性尿道炎

症状があらわれるまでの潜伏期間は、1週間から3週間ほどかかります。発症の仕方は緩やかで、急激に出現するわけではありません。排尿痛も程度が軽く、透明なさらさらした液、または粘性の液が分泌します。

3)雑菌性尿道炎

症状があらわれるまでの潜伏期間は、3日から3週間程度です。発症の仕方や症状はクラミジア性尿道炎と似ており、区別できないかもしれません。軽いかゆみや違和感、微熱が出るなど、症状は一定していません。

症状の程度や現われ方、感じ方には個人差がありますが、淋菌性尿道炎でなければ、感染していると自覚できないことも珍しくありません。性交渉を行った時点で、感染のリスクがあることを認識しておくのが賢明です。また性行為がなくても発症の可能性はあります。

女性が尿道炎を発症した場合では、排尿時や性交時の痛みや出血、分泌物が増加する、頻尿や残尿感といった症状がみられます。膀胱炎との併発というパターンが考えられますので、少しでも違和感がある時は、婦人科または泌尿器科を受診しましょう。

3.尿道炎の原因

尿道炎の原因となるのは、先述の通り性行為などによる淋菌やクラミジアといった細菌類の感染です。

また性行為がなくても抵抗力が落ちていると、普段から尿道口の付近にいる大腸菌やブドウ球菌などの雑菌が尿道へ侵入し、繁殖して尿道炎になることもあります。

感染菌で最も多いのは淋菌で、次がクラミジアです。これらだけで全体の7割を占めます。残りの3割が、それ以外の細菌類です。また、マイコプラズマ・ゲニタリウム、ウレアプラズマ・ウレアリティクム、それに膣トリコモナスといった感染菌もあります。

尿道炎を引き起こす要因として、まったく別の疾患が影響しているケースがあります。男性でしたら前立腺肥大症や、他にも尿路結石、腫瘍や糖尿病などの疾患をかかえていると、抵抗力や体力の低下から細菌の繁殖を抑えられず尿道炎を発症してしまいます。

女性における尿道炎の原因には、尿道口が肛門や膣と近い位置にあり、大腸菌などが侵入しやすいという要素もあります。また女性は冷え性の方が多く、トイレの回数が少ない傾向にあります。つまり雑菌が繁殖しかけても、排尿で流せるという機会が少なくなるのです。

4.尿道炎の治療

尿道炎の治療では、原因により適用される薬剤が異なります。症状の程度や種類がさまざまですので、まず原因となっている菌を明確にする必要があります。そのためには検査を行うことが必須となります。

尿道炎の治療では、主に薬剤療法が選択されます。抗生物質を服用することで、速やかな改善が見込まれます。治療期間は、1週間から10日ほどです。

尿道炎に対処できる薬剤は種類も多く、ドラッグストアなどでも販売されています。ご自身の判断で選ぶこともできますが、原因菌を正確に特定し、医療機関にて処方してもらう方が確実性の高い治療ができます

尿道炎は自然に治癒する疾患ではありません。また尿道の痛みや違和感が少なくても、きちんと最後まで治療をするべきです。痛みが軽くなったからと、自己判断で治療を途中でやめてしまうと難治性になり、完治させるのが難しくなる可能性も出てきます。

尿道炎を放置してしまうと、さまざまな悪影響が考えられます。菌が少しでも残っていれば、そこから再び繁殖します。男性、女性も含めて、尿道炎がきっかけとなって引き起こされる疾患には下記のような例があります。

  • 前立腺炎(急性もあり)
  • 精巣上体炎
  • 不妊症(男性、女性とも)
  • 急性腎盂炎
  • 腎炎
  • 睾丸へのダメージ、性機能の低下

尿道炎は比較的かかりやすく、また再発する可能性も高い疾患です。日頃から、尿道炎を予防する方法について考えておくのが賢明です。下記にまとめてみました。

  • トイレに行くのを我慢しない
  • 尿意が少なくても、定期的な排尿の習慣をつける
  • 利尿作用のある食べ物や水分を多めに摂り、排尿する機会を増やす
  • 性行為の後は排尿し、シャワーを浴びるなど清潔にする
  • 不特定、多数の性交渉はしない
  • 疲労やストレスを蓄積させないようにし、病後や体力が低下している時は安静にする
  • 身体の「冷え」に注意する

尿道炎は、気をつけないと繰り返してしまう傾向のある疾患です。排泄にかかわる問題であり、医療機関を受診するのが億劫になりがちです。しかし後々に悪影響を出さないためにも、完治させておくことが重要です。

治りにくいといわれる尿道炎ですが、原因を見つけしっかりと治療をすればよくなる病気です。どうぞあきらめないでください。