パーキンソン病は、脳内のドパミンという神経伝達物質が不足することで起こる神経変性疾患です。50代以降に発症することが多く、全国で15万~18万人、すなわち1,000人に1人の方がパーキンソン病でお困りになっています。

パーキンソン病は、大きく運動症状と非運動症状とに分けられますが、さまざまな症状が現れます。その中でも体のふるえは代表的な運動症状で、「振戦(しんせん)」と呼ばれます。振戦はパーキンソン病の最初に見られることの多い症状です。

自分の意志に反して体がふるえるのは、不快でもありますし、仕事などで細かい作業がしにくくなる可能性もあります。

パーキンソン病は急激に症状が現れるものではないので、初期段階では気づきにくく、軽いふるえがあっても、一次的なものだと思われることがあるかもしれません。しかし、パーキンソン病は放置しておくと、徐々に進行していきます。

「振戦」はパーキンソン病以外でも現れる症状なので、まずは鑑別が必要です。パーキンソン病と診断されたら、すぐに治療を開始しましょう。

パーキンソン病の治療には薬物治療や手術、リハビリがあります。パーキンソン病は早期に治療を開始すれば、進行を遅らせ、症状を改善することができます。

パーキンソン病の症状「振戦」を治すためには、パーキンソン病の症状「振戦」の特徴・治療について知ることが大切です。このページでは、パーキンソン病の症状「振戦」を治したい方のために、パーキンソン病の症状「振戦」の特徴・治療について詳しく説明しております。

1.パーキンソン病とは

身体のふるえを振戦(しんせん)と言い、パーキンソン病でよく見られる症状ですが、他の疾患や薬物・毒物によっても振戦の症状が現れることがあります。

似たような症状でも原因によって治療法が異なります。

そのため、パーキンソン病による振戦なのか、他の原因による振戦なのかを鑑別しなければなりません。鑑別するためには、パーキンソン病とはどのような病気なのかを知っておくことが必要です。

パーキンソン病とは、ドパミンという神経伝達物質の分泌量が減少してしまうことによって起こる、神経変性疾患です。神経変性疾患ではパーキンソン病がアルツハイマー病に次いで多いと言われています。

何らかの原因により中脳の黒質という神経細胞が減少すると、そこで作られるドパミンの分泌量が減少します。ドパミンは体の動きや意欲、ホルモンなどを調節する神経伝達物質であるため、ドパミンの分泌量が減少すると運動機能に障害が生じます。

パーキンソン病の症状は、運動症状と非運動症状に分けられます。「振戦」は運動症状の一つでパーキンソン病の代表的な症状です。

(1)運動症状

  • 安静時振戦:体を動かしていないときにふるえる
  • 筋固縮(きんこしゅく):筋肉がこわばる
  • 寡動(かどう)・無動:動作がゆっくりになったり、動かしにくくなったりする
  • 姿勢反射障害:バランスが取りにくくなり、転びやすくなる

(2)非運動症状

  • 便秘
  • 排尿障害
  • 起立性低血圧
  • 睡眠障害
  • うつ症状
  • 痛み
  • 倦怠感

パーキンソン病であるかを診断するための基準として次のようなものがあります。

  • パーキンソン病に特徴的な症状(パーキンソニズム)が見られる
  • 脳のCTやMRIで他の疾患が認められない
  • パーキンソニズムを起こす薬物・毒物の摂取がない
  • 抗パーキンソン病薬を使用することで症状の改善が見られる
  • ゆっくりと進行する

パーキンソン病はゆっくりと進行するため、症状が急に現れた場合は、パーキンソン病ではなく他の疾患の可能性が高いと考えられます。パーキンソン病と似た症状があっても、パーキンソン病と診断されない場合、パーキンソン症候群と呼ばれます。

2.パーキンソン病の症状「振戦」の特徴

パーキンソン病の症状「振戦」は、身体のふるえのことでパーキンソン病の代表的な運動症状の一つです。

振戦は他の原因によっても起こり得る症状なので、パーキンソン病によるものなのか、それ以外の原因によるものなのかを鑑別しなければなりません。

振戦の原因となる病気を鑑別するためには、パーキンソン病の症状としての振戦の特徴を知っておくことが必要です。振戦の症状はパーキンソン病の初期に現れることが多く、パーキンソン病の6割以上に見られるということです。

(1)振戦が現れる部位

パーキンソン病の症状である振戦は、手や足、頭、唇などに現れます。

(2)安静時に現れる

パーキンソン病における振戦の症状は何もしていない安静時に起こります。動き始めると症状が治まることが多いのですが、体を動かすことができない場面ではふるえを抑えることが難しく、緊張すると症状が強くなる傾向があります。症状が進行すると、体を動かしているときにも振戦が見られることがあります。

(3)左右非対称に現れる

パーキンソン病の症状「振戦」は、左右非対称に現れることが多いのですが、症状が進行すると、両側に現れるようになります。

パーキンソン病の症状として「振戦」が主症状である場合は、進行が遅いことが多く、他の症状も現れると進行が速まるようです。

3.パーキンソン病の症状の治療

パーキンソン病はゆっくりと進行していきますが、治療をすることで進行を抑えることができます。そのため、早い段階で治療を開始することが大切です。パーキンソン病の治療には、薬物治療、リハビリ、外科治療があります。

(1)薬物治療

①ドーパミンを補う

脳内でドパミンに変化することで不足しているドパミンを補います。速効性があり、治療効果が高いため、パーキンソン病の治療で使われる代表的な薬です。

②ドーパミンを持続させる

ドパミンに似た作用があります。持続時間が長く、1回の服用・貼付でほぼ1日効果が続きます。症状が軽い段階では、併用で治療を行います。

③ドーパミンの減少を防ぐ

パーキンソン病では、ドパミンが減少することにより、相対的にアセチルコリンという神経の興奮伝達物質が多くなっています。アセチルコリンの働きを抑えることで、振戦の症状を抑える効果があります。

(2)リハビリ

パーキンソン病と診断されたら、リハビリを行うことがとても大切です。主症状が運動症状である場合は、リハビリが治療の中心となります。パーキンソン病では体が動かしにくくなりますが、動かないでいると筋肉も衰え、症状が進行します。

症状に合わせた新しいトレーニングがいろいろと開発されてきています。体を動かすことで運動症状の改善だけでなく、気分転換にもなり、生活の質も向上します。有酸素運動ストレッチなど、無理のない範囲で行いましょう。

(3)外科治療

薬物治療が長期化すると、ウェアリング・オフ現象(L-ドパの効果が切れやすくなる)やジスキネジア(体が勝手に動いてしまう)が見られるようになってきます。これらの現象が強い場合は手術を行うこともあります。

手術する場所によって、振戦、ウェアリング・オフ現象、ジスキネジアの改善に効果があり、L-ドパの服薬量を減らすことも可能な場合があります。

パーキンソン病はゆっくりと進行する病気で、振戦は代表的な症状ですが、薬物治療やリハビリなどしっかりとした治療を行うことよって症状を改善することができます。どうぞあきらめないでください。