音響障害は、予期せず強大な音を聞いたり、大きな音を長時間聞き続けたりすることで発症する難聴です。音響障害は、内耳の有毛細胞(音を感じる細胞)が大きな音によって傷つけられてしまうために起こります。

音響障害になると、聞こえにくさ耳鳴り耳の詰まった感じなどの症状が現れ、ひどい場合には耳の痛みやめまいも感じることがあります。

突然大きな音を聞いた後に聞こえにくい、始終音のする所で仕事をしていたらいつの間にか会話が聞きとりにくくなっていた、というのは音響障害の可能性があります。

大きな音に接している時間が多い人は、気づかないうちに音響障害になっているかもしれません。音楽が好きな人も発症しやすいので、ときどき聴力検査をしたり、話し声が大きくなっていないか周囲の人に聞いたりして、異常がないか確認しましょう。

音響障害は放置したり、繰り返したりしていると慢性化してしまうことがあります。できれば予防を心がけ、発症してしまった場合はできるだけ早く治療を開始しましょう。

音響障害を治すためには、音響障害の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、音響障害を治したい方のために、音響障害の症状・原因・治療について詳しく説明しております。

1.音響障害とは

音響障害とは、強大な音を聞くことによって生じる難聴です。大きな音を聞くと、一時的に耳がキーンとなり聞こえにくくなりますが、多くは自然に治ります。耳が詰まった感じや、耳鳴り、難聴がすぐに回復しない場合を音響障害と言います。

音響障害は、強大な音による耳への障害が自然治癒の限界を超えたときに起こります。個人差もありますし、音の大きさや聞いていた時間によっても、発症する場合と発症しない場合があります。

爆発音や音響機器からの突発的な強大音によって生じた難聴を急性音響外傷と言い、痛みやめまいを伴うことがあります。予期しない音は避けようがありません。

これに対して、1日中騒音の中で働く人や、ヘッドホンで大音量の音楽を聞き続けていた人が難聴を発症した場合は、騒音性難聴と言います。騒音性難聴は耳が慢性的に音による刺激を受けることで起こります。

騒音性難聴はその原因によって、職業性難聴やヘッドホン難聴などと呼ばれています。職業性難聴の場合は、労災の対象となります。

2.音響障害の症状

音響障害の症状には次のようなものがあります。

  • 耳が詰まった感じ(耳閉塞感:じへいそくかん)
  • 耳鳴り
  • ある特定の音域が聞こえにくい
  • 耳の痛み
  • めまい

音響障害の症状はさまざまありますが、急性音響外傷の場合、強大な音を聞いた後、耳閉塞感が最初に現れます。耳閉塞感が治まると、耳鳴りや聞こえにくさといった症状が現れてきます。

急性音響外傷の場合、これらの症状は音源に近い方の耳だけに起こります。

急性音響外傷は、自然治癒するような一過性のケースもありますが、音によるダメージがあまりにも大きすぎた場合、耳鳴りや聞こえにくさに加えて耳の痛みやめまいを感じることもあります。

騒音性難聴の場合は、大音量に長期間さらされて少しずつ進行しているので、初期段階では症状に気づきにくいということです。職業性難聴やヘッドホン難聴は、状況を変えなければ症状が悪化する可能性があります。

騒音性難聴の症状で急性音響外傷と違う点は、耳閉塞感がないこと、同程度の難聴が両方の耳に起こることです。耳閉塞感など急激な変化がないため、音響障害に気づきにくいと言えます。

音響障害の症状は、音の大きさや接した時間にもよりますが、個人差もあり、その日の体調によっても異なります。症状が強ければ、日常生活に支障が出ることもあります。

音響障害は繰り返すことがあり、何度も繰り返していると症状が慢性化する可能性があります。

3.音響障害の原因

音響障害の原因は、大きすぎる音に接することです。突発的に大きな音を聞いたり、大きな音を長期間聞き続けたりすると、内耳の有毛細胞が障害を受けます。内耳の有毛細胞は音を感じ取る細胞ですので、ここが障害を受けると聴力が低下します。

急性音響外傷の場合、110dB(デシベル:音の大きさを表す単位)で起こり、130dBで耳が痛くなるとされています。

急性音響外傷の原因として、次のようなものがあります。

  • 音響機器からの突然の大音量
  • 落雷125dB
  • 花火:110dB

騒音性難聴は85dB以上の音を聞き続けることで発症するとされています。急性音響外傷の原因となるものほど大きな音でなくても、長時間さらされることで、内耳の有毛細胞に負担をかけ続けることになります。

騒音性難聴の原因としては、次のようなものが考えられます。これらの環境が長時間続くことによって、難聴を発症する可能性があります。

  • ヘッドホンやイヤホンを使用した大音量での音楽鑑賞100dB
  • ロックコンサートやライブ110dB
  • 工場や工事現場での作業
  • カラオケ
  • パチンコ店

熱心に仕事をしていたり、好きな音楽を聞いていたりしていただけなのに、知らないうちに聞こえにくくなっていたら、ショックでしょう。仕事ができなくなるのでは、音楽を聞くことができなくなるのでは、と不安になるでしょう。

最近はスマホや音楽プレーヤーで長時間音楽を聞く若い方も多いため、幅広い年代で音響障害を発症する可能性があります。

自分やご家族が音響障害を発症しやすい環境にいないか、チェックしてみましょう。症状の改善や予防のためには、まず自分にとって何が音響障害を起こす原因となるのかを把握することが必要です。

4.音響障害の治療

音響障害の治療は、主に薬物治療を行います。などを用いて、突発性難聴に準じた治療を行います。

突発的な音響障害は避けようがありませんが、一時的な症状で自然治癒する場合もあります。その限界を超えた場合は症状が残り、きちんと治療を行わなければ悪化する可能性があります。

音響障害は発症して1週間以内に治療を開始すれば、回復する可能性が高いとされていますので、2日たっても聞こえにくさや耳鳴りが残っている場合は、できるだけ早めに治療を開始しましょう。

慢性的な音響障害は、原因となる状況が長期間続いているために起こっているので、その状況を変えなければ、症状の改善は難しいでしょう。騒音のある環境を変えられないのであれば、大きな音からの影響を小さくする方法を考える必要があります。

騒音の中で仕事をしなければならない人は、支障がない範囲で耳栓などを使用しましょう。音楽を頻繁に聞く人は、少し音を絞る聞く時間を短縮する、ライブ会場ではスピーカーの近くは避けるなどして、音響障害のリスクを下げましょう。

音響障害は、大きな音によって耳がダメージを受け、難聴になる病気です。一時的な音響障害でも、繰り返すと慢性化して症状が悪化することがあります。繰り返さないよう、予防しましょう。

大きな音を避けられない場合もありますが、可能な限り音による障害を受けないですむようにしましょう。少しの工夫で音響障害を防ぐことができます。

音響障害は予防することができますし、発症した場合は、早めに治療を開始し原因となる環境を変えることで改善することができます。どうぞあきらめないでください。