外リンパ瘻は、内耳にあいた穴からリンパ液が中耳へと漏れ出す疾患です。リンパ液とは、脳脊髄液(のうせきずいえき)が耳の内耳へと流れ込んだものです。平衡感覚を支配するものであり、過不足なく満たされているのが正常な状態です。

内耳では、内側の内リンパとその外側にある外リンパで、リンパ液が満たされています。内耳には外部から集められた音を受け、先へ送り伝える役割をもつ「前庭窓」と「蝸牛窓」という部位があります。これらは外からの圧力にもともと弱い性質があるのです。

事故や衝突などにより頭部に強い衝撃を受けて内耳に圧力がかかると、膜に穴があいてしまいます。また普段の生活においても、ほんの些細な出来事をきっかけとして外リンパ婁を発症することがあるのです。

外リンパ瘻は、その症状から突発性難聴やメニエール病などと誤診されやすいとも言われています。しかし医学の研究が進み、有効な検査方法や診断方法も開発され、外リンパ婁の病名を認知される方も増えてきました。

外リンパ瘻を治すためには、外リンパ瘻の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、外リンパ瘻を治したい方のために、外リンパ瘻の症状・原因・治療について詳しく説明しております。

1.外リンパ瘻とは

外リンパ瘻とは、内耳からリンパ液が漏れることで生じる疾患です。わりと起こりやすい症状ではあるのですが、あまり知られていなかったのが現状です。

外耳から集められた音が入ってくる前庭窓と送り出す蝸牛窓は、先述の通り弱い部位であり、日常のちょっとした動作で破れてしまいます。

穴があいているという自覚は得られず、満たされていたリンパ液が漏れだすことで、さまざまな症状が出てきます。知名度も低かった以前では、外リンパ婁という病名までたどりつけずに、同様の症状を持つ別の疾患と誤って診断されることも多かったようです。

突発性難聴やメニエール病をはじめ、おたふくかぜによる内耳炎、眩暈症(げんうんしょう)などと間違われやすいのです。精神科や内科、婦人科では、うつ病や自律神経失調症、起立性調節障害、更年期障害と診断されることもあります。

近年になり、外リンパ婁の診断に有効な検査方法が確立されてきました。床に伏せて頭部が身体よりも下がった状態では、脳脊髄液の圧が上昇することを利用し、内耳でリンパ液が流出していないかという測定ができます。

具体的には、生理食塩水を中耳に注入して洗浄します。その液体を分析し、外リンパ婁につながる特定のたんぱく質が検出されるかどうかで判断がつきます。また、内耳や中耳のCTMRI画像も併せて診断の参考とすることで、確実性はより高まります。

2.外リンパ瘻の症状

外リンパ瘻の症状には、突発性難聴やメニエール病と共通したものがあります。

メニエール病は同じくリンパ液にかかわる疾患ですが、リンパ液が増えすぎるというのが外リンパ婁との相違点です。似通った症状としては、耳鳴りや音の聴こえにくさ、耳が詰まった感じなどがあります。

耳鳴りの症状にはいろいろなタイプがありますが、外リンパ婁に関しては「水流の音」であるのが特徴です。プールで泳いだあと、耳につまった水がなかなか出てこない時の不快感、あるいは水中にもぐっている時のような違和感のある聴こえ方をします。

めまいやバランス感覚の崩れからくるふらつき、といった症状も共通しています。転じて、頭痛や嘔吐、倦怠感、意欲の喪失といった、内科的あるいは心因性のストレスに絡んだ疾患かと誤診されるような症状も出現します。

外リンパ婁の症状には個人差があり、発症してから日ごとに悪化する方、悪化と改善を繰り返しながら徐々に悪化する方、中には症状をほとんど自覚がない方もいらっしゃいます。また発症した際に、「ぱちん」とはじける音(膜が破れた瞬間の音)が聴こえる場合もあります。

3.外リンパ瘻の原因

外リンパ瘻の原因は、直接的には内耳の一部分に穴があきリンパ液が漏れ出ることです。

穴があいてしまう原因はさまざまですが、内耳に圧力がかかるような動作をすることがきっかけとなります。日常の生活で行う何気ない動作も当てはまります。

例えば鼻をかむ、咳をする、くしゃみが出る、大声をはりあげる、トイレでいきむ、風船を膨らます、管楽器の演奏、重たい荷物を持ち上げようと瞬間的に力をいれるなどの動きです。

どれも普通にありがちな行動といえます。女性ですと、出産がきっかけとなる場合もあります。

直接、耳に影響を及ぼす行為として、耳かきを奥まで挿入しすぎて鼓膜を傷める、アクシデントで頭部に衝撃を受けることなどです。鼓膜が破れると、同時に外リンパ婁を発症することもあります。ラグビーやボクシングなどの体当たりをするスポーツも、原因となる危険性はあります。

また、気圧の変化を体験することも原因となります。海やプールで深く潜水する、ダイビングの準備として「耳抜き」をすることや、高速鉄道(新幹線やリニヤモーターカーなど)や飛行機に搭乗する、ジェットコース―ターに乗る、高度な山に登るなどです。

外リンパ婁は、ちょっとした行為が発症する原因となってしまうために、いつ、どこで、きっかけとなる行動をしたのか思い当たることがないケースも多々あります。症状が出ていても、それが耳の内部に原因があるということへ結びつかないのです。

4.外リンパ瘻の治療

外リンパ瘻の治療には、安静な状態を維持して自然に治癒していくのを待つ「保存的療法」と、外科手術を施す方法があります。

外リンパ婁を発症した原因と症状のレベルにより、適切な治療法を選択するようにします。

血流を改善する、末梢神経を拡張する、ビタミンを補給するといった効能を期待します。

突発性難聴の治療をする際にも、同様の薬剤が適用されています。

安静を保つのには、ベッドで枕の位置を普段よりも高くして、頭を約30度ほど上げます。これは脳脊髄圧を下げるのが目的です。数日間、上記の薬を服用しながら安静にすることで、破れた膜の綻びが治癒していきます。

外リンパ婁の原因を考えますと、発症する可能性の高い行為は慎むことで予防できるといえます。とくにスキューバーダイビングや体当たりするスポーツ、トランペットやフルートといった管楽器を演奏するなどの趣味をお持ちの方は、外リンパ婁の発症リスクが高いと認識しておくのがよいでしょう。

日常の生活でも、家事や何らかの作業をする時は、見下ろす姿勢ばかりとらない、トイレでは必要以上にいきまない、鼻をかむときや咳をするときは力みすぎないなど、気をつける習慣をつけたいものです。

外リンパ婁は、よく起こる疾患です。もともと鼓膜や内耳窓などの部位は繊細なつくりであるため、ちょっとした衝撃で損傷を受けるのです。耳に異変を感じたら、すぐに治療を行う事が大切です。どうぞあきらめず、早急な治療を行ってください。