顔面神経麻痺とは、顔面の片側がうごかせなくなることを言います。顔の表情を作る表情筋を司る顔面神経が何らかの理由で働かなくなることで起こります。

顔面神経麻痺は、原因不明で突然起こるものが約60%を占め、“ベル麻痺”と呼んでいます。次に多いものはハント症候群と呼ばれる帯状疱疹(ヘルペス)ウイルスが再活性化したもので約15を占めています。その他には、骨折、糖尿病、中耳炎や腫瘍、脳梗塞などが原因で起こります。

顔面神経麻痺は40代に最も多く、10代以下には少ないと言われています。またベル麻痺、ハント症候群による顔面神経麻痺には、を用います。治療はできるだけ早く始めた方が予後が良いことがわかっています。

顔面神経麻痺の主な症状は、1)顔面の半分の筋肉が動かせなくなる、2)下の前2/3味覚の障害、3)耳や後頭部の痛み、4)聴覚が敏感になり、音が耳に響く、などの症状が現れます。

顔面神経麻痺の主な訴えとしては、1)口元からよだれが出たり、飲んだものが口角からこぼれる、2)頬の中に食べ物がたまる、3)“パピプペポ”がうまく言えない、4)目を閉じようとしてもうまく閉まらず、涙が溢れるなどを自覚します。

顔面神経麻痺を治すためには、顔面神経麻痺の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、顔面神経麻痺を治したい方のために、顔面神経麻痺の症状・原因・治療について詳しく説明しております。

1. 顔面神経麻痺とは? 

顔面には三叉神経という神経と顔面神経という2種類の神経が通っています

この二つの神経はそれぞれ役割が分かれていて、顔の感覚を担当する三叉神経と顔の表情を作る筋肉の運動を担当する顔面神経のそれぞれが協調して顔の機能を司っています。

この顔の働きのうち顔面神経に異常が起こることで起こる疾患が顔面神経麻痺です。顔面神経は12個ある脳神経の一つで、脳の中の脳幹と呼ばれる部分から出て、骨に開いた細い通り道を通って顔に到達します。この間に何らかの異常が生じて起こるのが顔面神経麻痺と呼ばれます。

顔面神経麻痺は突如として起こります。顔面神経麻痺の約60%は原因不明であり、これを別名“Bell(ベル)麻痺”と呼んでいます。次に多いのが、ヘルペスウイルスによる顔面神経麻痺で、“ハント症候群”と呼ばれています。他にも、骨折や脳梗塞、脳腫瘍、糖尿病、ストレスなどが主な原因となっているようです。

顔面神経の主な異常の原因には先ほどお話したヘルペスウイルスというウイルスと水痘帯状疱疹ウイルスというウイルスの2種類のウイルスの影響が知られています。

この2種類のウイルスは人体に感染した後に神経に沿った炎症を起こすことがわかっていて、この過程で顔面神経を傷つけてしまうのです。このような神経の障害は時によっては重症化することもあるので、顔面神経麻痺の早期発見と早期治療が不可欠なのです。

2. 顔面神経麻痺の症状

顔面神経麻痺の症状で主なものは表情の喪失です。顔面には表情筋という筋肉があり顔を作っている骨と顔の皮膚とを繋ぎ、表情を作り出す働きをしています。

この表情筋を動かしている顔面神経に異常が起こると表情を動かすことができず様々な症状が出てきます。

代表的な症状は突然に現れる片側の表情の喪失です。目を閉じる時に働く神経も顔面神経による働きなので、兎眼(とがん)という目が十分に閉じなくなる症状が知られています。額にシワを作ることができず、口角が下がったり、食事の時に食べ物が口からこぼれてしまったりと顔の片側だけにいろいろな症状が出てきます。

このほかにも涙が出にくくなったり、唾液があまり分泌されなくなったり、口の中が乾いてしまうことがあります。感染するウイルスによっては口の中や耳の周りにブツブツと水疱が出てくるので、顔面麻痺に伴って現れる様々な症状に注意が必要です。

一番の大きな問題としては外観の問題が大きく、表情の喪失と左右差により、精神的にも大きな影響があります。外出に対する恐怖感など様々な社会的な問題が起こり得ます。

また、まぶたを閉じられず、涙が止まらない、乾燥のために角膜が傷つきやすい、口角が下がることにより、口の中に食べ物が溜まってしまったり、特に水分などが口角からこぼれる、よだれが出てしまう、パピプペポがうまく発音できない、などの様々な身体上の症状も問題となります。

このように食事がうまくできない、はっきりと発音ができないことから、さらにストレスを感じたり、対人関係に支障をきたすことが多くなります。

3. 顔面神経麻痺の原因

顔面神経麻痺の原因は大きく分けると3種類に分けることができます。

最も多くの原因を占めているのが単純ヘルペスウイルスによる感染です。単純ヘルペスウイルスはいわゆる口唇ヘルペスや性器ヘルペスの原因ウイルスで、原因不明とされていた顔面麻痺の原因としてこの単純ヘルペスウイルスが指摘されてるのです。

このほかにも水痘帯状疱疹ウイルスの感染が原因で起こる顔面麻痺が知られています。この水痘帯状疱疹ウイルスが原因の顔面麻痺は特にラムゼイハント症候群と呼ばれていて、顔面神経の周囲の炎症が原因で神経が圧迫されてしまったり、神経自体が炎症を起こしてしまうことで顔面麻痺が起こります。

この時に、耳の周囲にブツブツとした水疱や出血が起こることが特徴で、このような症状が合わさって見られる場合にはラムゼイハント症候群が疑われます。

ハント症候群はその約半数が重症化する傾向があるとされており、早期に治療を始めることで予後は良くなると言われています。顔面神経麻痺は早期発見により症状の悪化を食い止めることができるので症状には常に注意しておきましょう。

他にも、側頭骨の骨折により顔面神経が傷つけられてしまったり、脳腫瘍、中耳炎や糖尿病によって起こる末梢神経障害によっても起こることがあります。他にも脳梗塞などの中枢神経障害によっても起こることがあります。

このほかにも脳腫瘍など様々なことが原因で顔面神経の麻痺が起こります。初期症状をしっかりと把握して、早めに病院にかかるようにしましょう。

また、顔面神経のいかなる部位に障害があるのかで、中枢神経と末梢神経の障害に分けられます。中枢神経障害は脳内の病変である脳梗塞や脳腫瘍などで起こります。末梢神経障害は脳の中にある顔面神経核から筋肉に至るまでの神経に障害を起こすことを言います。

中枢神経を障害する顔面神経麻痺では、おでこの筋肉である前頭筋と呼ばれる筋肉は問題なく動かせるのが特徴的です。眼球を上方に動かしおでこを見るように、するとおでこにシワがよるのが前頭筋の作用です。

4. 顔面神経麻痺の治療

顔面神経麻痺の治療は早期に行われることで後遺症を残さずに治療することができます。顔面神経麻痺の治療は1)薬物療法、2)手術療法、3)リハビリテーションなどがありますが、顔面神経麻痺の原因により治療法か異なります。

1)薬物療法

まず、麻痺が始まってすぐの段階では神経や神経の周囲の炎症を取り除くようにする治療法が取られます。

また、ヘルペスウイルスや水痘帯状疱疹ウイルスなどのウイルス感染が疑われる場合には抗ウイルス薬を投与をします。ベル麻痺などは原因不明であることもしばしばですが、ウイルス感染の影響も否定できないため、特に麻痺の強いものには抗ウイルス薬の投与がガイドラインでも推奨されています。

また顔面神経麻痺により、まぶたが閉じられないという症状が出現し、角膜を傷つけてしまうということも起こり得るために、目薬や眼帯などが処方されることもあります。また神経の修復に必要なビタミン剤なども処方されます。

2)手術療法

手術は、炎症などにより神経が炎症を起こし腫れると神経が通っている骨の細いところで、神経が圧迫されてしまい、神経自体が圧迫を受けてうまく神経が働かないことがあるために、圧迫している骨を削るものです。

骨を削ることで神経の通り道を広くして神経自体の損傷を回避します。しかし、手術の適応かどうか調べるために神経が傷ついていると判断する検査を行うには1週間以上の経過観察が必要であり、なんでも手術すると過剰な処置になってしまうなど、判断が難しいと言われています。

3)リハビリテーション

顔面神経の衰えを防ぐ意味から、低周波による電気刺激のリハビリテーションが行われることもあります。またマッサージや鏡を見ながらの表情筋を動かす自己訓練などを指導します。また、言語療法による、発声訓練なども行われます。

しかし、過度の運動訓練や低周波電気刺激は病的共同運動という異常な運動を引き起こすことがあり注意が必要です。病的共同運動は神経と筋肉のつながりが間違えて繋がってしまう現象で、目を閉じると一緒に口が動いてしまうような症状のことを言います。

顔面神経麻痺は、ウイルス感染との関連が深い病気です。ウイルス感染以外にも、原因がわからないことも多々あります。また、外観的な問題からもストレスが多く、外出などを避けるようになったりと、精神的なストレスも大きくなるためそのストレスにより麻痺を悪化させてしまうこともあります。 

しかし早期に治療を行うことにより、その予後が異なると言われています。早期の治療開始が回復にも大きく繋がります。顔面神経麻痺は、早期にしっかりと治療をすれば良くなる病気です。どうぞあきらめないでください。