めまいは、年齢を重ねるにつれ、お悩みの方が増える症状の一つです。加齢によって体の機能が衰えたり、複数の持病があったりすることが原因で起こりやすい症状であるといえます。ご高齢の方のめまいは、若い方と比べて気をつけなければならないことがあります。

ご高齢の方のめまいは、原因となる病気に潜む危険性、症状が出た際の転倒などの二次損傷、原因が特定しにくいことなど、ご本人も周囲の方も気になる点がいろいろあります。

ご高齢の方のめまいの特徴や注意点を知っておくことは、ご高齢の方のめまいを治すためにとても大切です。このページでは、ご高齢の方のめまいを治すために、ご高齢の方のめまいについて詳しく説明しております。

1.ご高齢の方のめまいの特徴

ご高齢の方のめまいの特徴は、1カ月以上続く慢性のめまいが多いことと、原因となる病気を特定しにくいことです。

ご高齢の方でめまいにお悩みの方の多くは、「歳だから仕方がない」とあきらめてしまいがちです。また、ご本人がご家族に迷惑をかけたくないと、なかなか症状を訴えないといった傾向もあります。

めまいは、他の症状をともなっていることもあり、その組み合わせなどから、原因となる病気を特定する手がかりとなります。

しかし、ご高齢の方で複数の病気が重なっていたり、めまいの感じ方が典型的でなかったりすると、特定することがむずかしくなります。

めまいの特徴を大きく分類すると、「中枢性(ちゅうすうせい)」のものと「末梢性(まっしょうせい)」のものがあります。「中枢性」めまいは、小脳や脳幹など中枢神経系に原因のあるめまいです。「末梢性」めまいは、内耳などに原因があるめまいです。

めまいは、年齢が上がるにつれ、末梢性から中枢性の方が多くなっていきます。特に70歳以降では中枢性の割合が高くなります。高齢化社会の現在、小さな脳梗塞(のうこうそく)によるめまいを起こしている方が増加している可能性があります。

脳梗塞などの前兆として起こるめまいでは、命にかかわる危険性もあります。したがって、ご高齢の方がめまいを起こした場合、神経内科・脳神経外科も受診しておくことをお勧めします。

2.ご高齢の方のめまいを引き起こす要因

18e8bbbaご高齢の方はめまいを起こしやすくなります。めまいを引き起こす要因として考えられるものに、加齢による体の機能低下、病気、睡眠障害、薬の影響などがあります。

 平衡(へいこう)感覚の衰え

年齢を重ねると、耳や目からの情報が中枢神経にきちんと伝わりにくくなります。その結果、バランス感覚が乱れ、めまいを起こしやすくなります。

 血圧の調整力低下

ご高齢になると、血液を送り出すポンプの働きが弱くなり、脳内に充分な栄養や酸素が届かなくなります。そのために、血圧の調整がうまくいかず、めまいが起こりやすくなります。

座っている状態から立ち上がった際にめまいを起こす方がいらっしゃいます。血液が脚にたまり、脳への血流量が減るために起こる起立性低血圧です。このような症状は若い方でも起こりますが、ご高齢の方は、血圧が一旦下がってしまうと回復するのに時間がかかります。

 体内の水分不足

ご高齢の方は、のどのかわきを感じにくいことや夜間頻尿などを避けるために、水分をあまりとらない傾向があります。しかし、体内の水分が不足すると、血液が濃くなり血流が悪くなります。その結果、めまいや脱水の症状を起こしやすくなります。

 脳血管障害

血圧の変動や血行不良により、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が起こると、めまいの症状も現れます。

体に麻痺が起こらない程度の小規模な脳梗塞は、気がつかないうちに何度も起きている可能性があります。日頃から血圧異常や動脈硬化がある方は、めまいがおさまっても放置せず、脳神経外科などで検査を受けることをお勧めします。MRI検査を行うと、小さな脳梗塞がたくさん見つかることがあります。

 睡眠障害

睡眠障害もめまいを起こす原因と考えられます。うつ状態の方が抗うつ薬の効果で睡眠状態が良くなると、めまいが改善されたという例もよくあります。

 薬の影響

ご高齢の方は、いくつもの症状を抱えて、複数の薬を飲まれている方が多くいらっしゃいます。高血圧・狭心症・糖尿病・不安の薬、睡眠補助薬、抗生物質など、さまざまですが、薬の影響でめまいやふらつきの症状が現れることがあります。

たとえば、高血圧はご高齢の方に多い症状の一つです。血圧を下げるための降圧剤の服用により、一時的に血圧が下がりすぎ、めまいを起こすことがあります。

3.ご高齢の方のめまいで気をつけること

6e0322d0ご高齢の方のめまいで気をつけることは、日常生活の中にいろいろあります。めまいを起こさないための心がけ、めまいが起きたときの対処を日頃から考えておきましょう。

ご本人だけでなく、周囲の方も知っておく必要があります。

 めまいを起こさないために

  • 規則正しく栄養バランスの良い食事をとる
  • 飲酒は控えめにする
  • タバコは控えめにする
  • 充分な睡眠をとる
  • 運動や趣味で気分転換をする
  • のどのかわきを感じなくても水分補給を心がける

 めまいが起きたときの対処

  • めまいと同時に、「頭痛」「手足に力が入らない」「ろれつが回らない」などの症状をともなう場合は、命にかかわる危険性があるので、迅速に救急病院に搬送する
  • 緊急性がない場合は、めまいが軽くなるまで、安静にして気持ちを落ち着かせる
  • 処方薬がある場合は、とんぷく薬で症状を抑える

また、症状が出た際に転倒など二次的な損傷がないよう、めまいと上手につきあっていくための対策もしておきましょう。ご本人の心がけと周囲の方の協力が必要です。

ご本人も周囲の方に遠慮せず、症状や要望についてきちんと伝えましょう。そのことにより周囲の方も必要な対策が分かり、症状の改善の早道となります。

年齢を重ねてくると、筋力や関節の柔軟性が衰えてくるため、めまいを起こして体のバランスを崩した際に転倒してしまうことがあります。転倒によりケガや骨折をすると、しばらく動けなくなり、それがきっかけで寝込みがちになる可能性もあります。このような状況は防ぎたいものです。

階段・トイレ・浴室に手すりをつける、部屋の段差をなくす、外出時には杖を使うなど、ふらついたときに支えとなるものを備えておきましょう。また、日頃から適度な運動をして筋力をつけておくことも、転倒を防ぐ手段となります。

ご高齢の方の急性のめまいは、若い方と比べて重症化する傾向があります。ふらつくタイプのめまいには、毎日のリハビリが効果的です。めまいの症状が出たときの身のこなし方を訓練することになり、筋力強化にもつながります。

ご高齢の方は、ご家族や周囲の方に迷惑をかけないようにと我慢され、ご自分から症状を訴えない場合があります。ご家族や身近な方は、常にご高齢の方に目を配り、状況を把握しておく必要があります。いつもと様子が違うときには、即座に対応できるようにしておきましょう。

ご高齢の方のめまいに対しては、周囲の方との連携が非常に大切です。ご本人だけに任せるではなく、日頃から健康管理を共有しておくことが、いざというときに役立ちます。あきらめずに治療をなさることが大切です。