良性発作性頭位(りょうせいほっさせいとうい)めまい症とは、頭の位置を変えたときに起こる回転性のめまいで、自分や周囲が回転しているように感じます。

良性発作性頭位めまい症は耳が原因で起こるめまいで、耳石(じせき)がはがれて移動してしまうために起こります。

良性発作性頭位めまい症では、上の方を見上げたり、頭を下げたり、横を向いたりと何でもないような動きでめまいが起こります。良性ですので、命にかかわるような深刻な病気と言われますが、本人にとっては不快で、突然起こるため、とても大きな不安も生じます。

良性発作性頭位めまい症は再発しやすい病気ですが、自然治癒も可能です。しかし、早期の適切な治療を行えばより早く回復し、再発を防ぐこともできます。

良性発作性頭位めまい症を治すためには、良性発作性頭位めまい症の症状・原因・治療について知ることが大切です。このページでは、良性発作性頭位めまい症を治したい方のために、良性発作性頭位めまい症の症状・原因・治療について詳しく解説しております。

1.良性発作性頭位めまい症とは

良性発作性頭位めまい症とは、耳が原因となるめまいの一つです。めまいの中では最も多い症状で、年齢が上がるほど発症しやすいと言われています。

良性発作性頭位めまい症では、頭の位置を変えることで、突然、回転性のめまいが生じます。回転性のめまいとは、自分自身や周囲がぐるぐると回転しているような感覚です。

良性発作性頭位めまい症では、めまいが起こっているとき、吐き気や眼球の揺れが見られることもあります。耳に原因がある病気ですが、聴力の低下や耳鳴りはありません。

良性発作性頭位めまい症では、めまいは長く続かず、短時間で治まります。エプリー法という理学療法を行って症状の改善が見られた場合は、良性発作性頭位めまい症の可能性が高いと言えます。

良性発作性頭位めまい症は、「良性」と言われるように命にかかわるようなものではなく、通常は自然に治まります。しかし、急にめまいが起こるため、場合によっては転落や転倒の危険性があります。

2.良性発作性頭位めまい症の症状

良性発作性頭位めまい症の症状は、頭を動かしたときに突然起こる短時間のめまいが主症状です。このめまいは回転性のめまいで、自分や周囲がぐるぐると回転しているように感じます。

良性発作性頭位めまい症の症状は、上の方を見上げたとき、頭を下げたとき、横を向いたときなど、ある一定の向きに頭を動かしたときにだけ起こります。じっとしているときには起こりません。

良性発作性頭位めまい症で起こるめまいは長くは続きません。1回のめまいは数十秒程度であることが多く、長くても数分で治まります。めまいは繰り返すことがありますが、繰り返すうちに症状が軽くなります。

良性発作性頭位めまい症の症状としては、めまいのほかに吐き気嘔吐眼球の揺れが現れることがあります。しかし、難聴や耳鳴りはありません。また、突然めまいが起こるため、強い不安を感じることがあります。

3.良性発作性頭位めまい症の原因

良性発作性頭位めまい症の原因は、内耳の耳石器という部分にあるべき耳石(カルシウムの粒)が、耳石器からはがれて、三半規管(さんはんきかん)に入ってしまうことによる脳の錯覚です。

耳石器とは、頭の位置や重力など、外部の刺激を感じ取る部分で、通常はこの中に耳石は収まっています。しかし、加齢や耳の感染症、ケガ、メニエール病、長期間の安静状態などがきっかけとなって、耳石がはがれることがあります。

耳石は平衡(へいこう)感覚にかかわるカルシウムを含む粒で、体の傾きに応じて移動します。

三半規管は平衡感覚をつかさどる器官で、中はリンパ液で満たされています。このリンパ液の動きによって脳が体の傾きを感じ取っています。

耳石器からはがれた耳石が、頭の位置の変化によって三半規管に入ると、体が動きを止めてもリンパ液は揺れ続けます。リンパ液が動いているため体が動いていると脳は感じ取ってしまいます。脳が受け取った情報と実際の体の動きとが異なるために、めまいが起こります。

4.良性発作性頭位めまい症の治療

良性発作性頭位めまい症の治療を行う際は、検査をして良性発作性頭位めまい症であると判断されなければなりません。めまいが起こる病気はさまざまあり、脳に原因がある中枢(ちゅうすう)性めまいの場合は緊急性があります。

まず問診で、めまいがいつ、どれくらいの時間続いたか、ほかに症状はないかなど詳しく確認します。その後、身体の診察、眼振(がんしん:眼球の揺れ)検査などを行います。脳の病気の可能性がある場合はCTMRIなどの画像検査を行います。

良性発作性頭位めまい症は耳に原因がある末梢(まっしょう)性めまいです。中枢性めまいではないことが証明され、良性発作性めまい症と診断されたら、その治療を行います。

良性発作性頭位めまい症の治療は、耳石を元の位置に戻す理学療法と、再発を予防する運動療法を行います。薬物療法は良性発作性頭位めまい症自体の治療として行われるのではなく、つらい症状を抑えるために一時的に行われる場合があります。

(1)理学療法

三半規管に迷い込んだ耳石を元の位置に戻す方法です。いくつか方法がありますが、エプリー法で大半の方のめまいが改善されます。エプリー法は、頭や体の位置を変えていきながら耳石を移動させます。

エプリー法で耳石をきちんと元の位置に戻すためには、頭や体を動かす順序がありますので、適当に動かすのではなく、指導を受けて行いましょう。うまく耳石が戻れば、すぐに症状が治まり、めまいが起こったときの位置に頭を動かしても、めまいが起こりません。

良性発作性頭位めまい症はほとんどが自然治癒しますが、エプリー法などの理学療法を行った方が早く改善されるということです。

2)運動療法

良性発作性頭位めまい症は再発することが多いのですが、あえて頭を動かす運動をすることで、耳石をたまりにくくし、再発を予防することができます。めまいが起こりやすい姿勢を繰り返すことで、めまいが起こりにくくなります。

良性発作性頭位めまい症は安静にするよりも、積極的にめまいが起こりやすい体勢をとる訓練をする方が早く回復すると言われています。ただし、運動中にめまいが起こった場合は無理に進めず、症状が治まるのを待ちましょう。

3)薬物療法

薬物療法は良性発作性頭位めまい症そのものを治す治療ではありません。めまいや吐き気、不安感を抑えるために一時的に使用することがあります。症状が和らぐので、その後の理学療法が行いやすくなります。

良性発作性頭位めまい症は、突然めまいが起こるため、不安を感じる方が多いでしょう。めまいだけでなく吐き気を感じることもあります。

良性発作性頭位めまい症は、治療をしなくても、時間の経過とともに自然に治る病気です。しかし、再発しやすい病気でもあります。短期間とはいえ、不快な症状からは一刻も早く解放されたいでしょう。

良性発作性頭位めまい症は、適切な治療を行えば、より早く治すことができます。また、再発を予防する治療法もあります。早く回復すれば不安感も少なくなります。どうぞあきらめないでください。