難聴の原因として考えられることは、わかりやすいものから複雑なものまで実にさまざまです。難聴には種類があり、いくつかの検査を行い、ようやく原因が特定できる場合もあるのです。別々の要因が重複して潜んでいるケースもあります。

難聴を治すためには、難聴の原因について知ることが大切です。また難聴に係わる部位はどこなのかを理解する必要もあります。

このページでは、難聴を治したい方のために、音を聴くしくみや難聴の原因について詳しく説明しております。

1.難聴の原因となる病変部位

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難聴の原因となる病変部位は、主に耳とその周辺や脳内にあります。しかし、それだけに限りません。まずは音を聴く際に、どのような部位が機能しているのか、基本的なしくみを知る必要があります。

身の回りにあふれている雑多な音は、まず耳の穴に入ってきます。耳は外側から順に、外耳、中耳、内耳、さらに後迷路へとつながっています。

集まってきた音の正体は、空気の振動です。鼓膜(こまく)を震わせ、耳小骨(じしょうこつ)から蝸牛(かぎゅう)へと伝わります。

蝸牛では音を電気信号に変換し、神経である後迷路が脳に伝えます。それらの音がどういった意味を持つのか、判断・選別するのは脳内の視床下部という部位です。

最終的に聴覚野が認識して、私たちは「音を聴く」ことになるのです。

鼓膜や蝸牛、聴神経や聴覚野、それに三半規管や耳石器などのバランス感覚を支配する部位、脳内のどこかに障害が出てしまうと、難聴の原因となります。

音を正しく伝え、分析し、理解するという流れのどこに問題があるのか、突き止めることが治療への鍵となります。

難聴は、大きく分けますと伝音性難聴と感音性難聴、それら両方が混在する混合性難聴、それに機能性難聴などがあります。それぞれの難聴で、原因となる病変部位は異なってくるのです。

まず外耳から中耳にかけて障害があり、音がうまく伝わらないのが伝音性難聴です。内耳から奥につながる部位に問題があれば感音性難聴となります。両方の要因があるものが混合性難聴です。

機能性難聴は、耳そのものや脳内が主原因ではなく、ストレスや自律神経の不調などの精神的な要因が背景にあります。心因性の場合は、他にも疾患があることが多く、難聴はそのうちのひとつと考えられます。

2.伝音性難聴の原因

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伝音性難聴の原因は、音の伝わり方に問題があると考えられます。

耳の外側に近いところにある外耳や外耳道、あるいは鼓膜といった部位が関係します。

外部からの衝撃で、これらの部位が傷つく、大音量で鼓膜が破けるなど、わかりやすい原因です。

耳垢(みみあか)は、放置していても自然と耳の外へと押し出されます。しかし執拗な耳かきの影響で、逆に奥へと押し込んでしまうケースがあります。

このような耳垢塞栓(じこうそくせん)や、幼児が無理やり耳に玩具を入れてしまうアクシデント、入浴や海水浴で耳に詰まった水が出てこないなども原因となります。

生まれつき外耳道が塞がっている、極端に狭い、耳介や中耳が形成されていない「奇形」というケースもあります。

薬の副作用により、またウィルスや細菌によって外耳周辺に炎症が起きて、なかなか治まらないのも難聴のきっかけとなります。

3.感音性難聴の原因

2bc58edc感音性難聴の原因は、音の振動から電気信号への変換がうまくいかない、内耳から奥の部位へ伝わらないことです。

伝音性難聴と比較すると、特定の周波数だけ聴き取れない、耳にはいるが聞き間違いをする、耳鳴りをともなっているなどの特徴があります。

具体的には、加齢により機能が衰えることや、中耳炎が完治せず慢性化し内耳炎となる例があります。また近年、増加している突発性難聴も、感音性難聴に分類されます。

今のところ明確な原因は究明されておらず、厚生労働省から難病の指定を受けています。

外的な環境要因の強い騒音性難聴も、感音性難聴のひとつです。工場や工事現場などで作業に従事する方に多く、職業病ともいえます。

継続的に大音量を耳にすることで発症します。企業などがきちんとした対策をとることで、予防することはできます。

聴神経から脳内に音の電気信号が伝わった際に、正しく認識できないのは、その過程の部位に問題がある可能性があります。

たとえば、聴神経そのものや近い位置に腫瘍ができている、血管に瘤(こぶ)ができて狭窄となっているなど、さまざまなケースがあります。

メニエール病を発症している場合、症状として聴こえにくさの他にも強いめまいが出てきます。まったく別の疾患からきている、また重複していれば余計に、原因が特定できないこともあります。

4.混合性難聴の原因

e5d5e2f7混合性難聴の原因は、伝音性難聴と感音性難聴の両方がまじりあった難聴です。

どちらの要因も併せもっています。老人性難聴は、このタイプに当てはまります。

検査の結果で、伝音性難聴と感音性難聴のどちらかの特徴だけでなく、両方の要因があらわれます。

また最初から混合性難聴であったわけでなく、難聴の症状が悪化して結果的に、混合性難聴となってしまう場合もあります。

治療の長期化や、症状の慢性化、また年齢を重ねていくうちに機能がしだいに落ちてしまう、といった原因が背景にあります。

5.機能性難聴の原因

機能性難聴の原因は、心因性のものと言われます。

ストレス社会に身を置く現代は、ご自身が意識していないところで、精神的な圧迫を強いられていることが多くあります。

自律神経の不調でコントロールができなくなっている、不安が強いなどの状況が関係しています。

難聴だけでなく、めまいや不眠症、肩こりや食欲不振など、他にも症状があるケースが見受けられます。

難聴の検査をひと通りして、別のタイプにある要因が当てはまらない場合、心療内科などで行うテストやカウンセリングを慎重に行います。

機能性難聴では、気質的な面も診断の基準となります。ストレス耐性が弱い、神経質であるなど発症しやすい性格があり、うつ状態と共通したものがあります。

割合は、男女比ですと女性が多く、年齢は20歳代から30歳代と、比較的若い世代が中心です。

両側の耳に症状が出て、しかしご本人は疾患に気づいていない、人との会話やコミュニケーションの不都合は少ないという傾向があります。

あらゆる難聴の検査を重ねて、耳や脳の機能に明らかな損傷が見つからないことも特徴です。

機能性難聴では、心的なストレスをかかえていること自体に、無頓着な場合もあります。何が原因でストレスとなっているかを追求する以前に、精神を開放する必要性があることを理解するのが先決といえます。

ストレスが軽減されれば、さまざまな症状も出現しなくなり、音の聴こえにくさも感じなくなっていくと考えられます。機能性難聴の原因は、心の中にあるので、腰を据えた治療となる場合もあります。

「音を聴く」という所作は、生きていく上で重要なはたらきをします。危険が近づいて身を守ろうとする時、音はたいせつな判断材料となります。

難聴の原因をさぐるのは、時間を要することもあるでしょう。しかし適切な治療につなげるために、必要な作業です。

難聴でお悩みの方は多くいらっしゃいます。検査方法も様々です。何がご自分の難聴を引き起こしているのかを追求し、どうぞあきらめず治療に専念してくだい。