音樂鳴り(音楽幻聴)は、耳鳴りの一種です。耳鳴りにはさまざまなタイプがありますが、単純な音が連続して聞こえることが多く、音樂鳴りは非常に珍しいタイプと言われます。音樂鳴りは、一つの音ではなく、高音や低音などが複数重なって音楽のように聞こえるため「音樂鳴り」という症状名がついています。

「音樂鳴り」という名前がついていますが、本当の音樂を聞くように心地よいわけではありません。音樂鳴りが進行すると、苦痛を感じ、生活に支障をきたすこともあります。

音樂鳴りは難聴が原因で起こることが多く、難聴が改善すると音樂鳴りも治りやすいと言われています。音樂鳴りを治すためには、音樂鳴りについて知ることが大切です。このページでは、音樂鳴りを治したい方のために、音樂鳴りの原因や治療について詳しく説明しております。

1.音樂鳴りとは

音樂鳴りとは、非常に珍しいタイプの耳鳴りです。高音や低音が複数重なって音楽のように聞こえるため「音樂鳴り」という症状名がついています。

しかし、音楽のようであると言っても、実際は耳鳴りの一種ですから、不快感があります。

聞こえる音は、金属的な甲高い音から低音まで個人差がありますが、他の耳鳴りと違って音樂鳴りは、単一の音ではありません。

音樂鳴りは、難聴が原因で起こることが多いのですが、原因となる疾患が一つではない場合があります。複数の疾患が原因となっている場合は、診断がむずかしく、治療にも時間がかかります。音樂鳴りは、楽器を演奏している人に発生しやすいとも言われています。

音樂鳴りは、治療せずに放置すると音が次第に大きく聞こえるようになり、強いストレスとなります。そのため、症状が軽いうちに検査を受けて、できるだけ早く治療を始めましょう。

2.音樂鳴りと難聴

音樂鳴りを含む耳鳴りは、難聴が原因で起こることが多いと言われています。

耳鳴りを発症された方は同時に難聴の症状があり、難聴と診断された方は耳鳴りを伴っているということがよくあります。そのため、音樂鳴りの症状がある方は、難聴を疑う必要があります。

難聴はさまざまな種類がありますが、早急な対応を必要とする難聴に突発性難聴があります。

突発性難聴は、突発的に聞こえ方の異常が現れ、自覚しやすいので、すぐに治療を始めることが可能です。48時間以内に治療を開始すれば回復が見込めます。

難聴で特定の音が聞こえなくなると、脳は感度を上げて音を拾おうとします。それは、周囲に音がしていないのに、耳の中では音がしている状態になるということです。音樂鳴りはそれと似た理由で起こる症状です。そのため、難聴が改善すると音樂鳴りも治まる可能性があるのです。

音樂鳴りと難聴には、密接な関係があります。自覚症状が難聴のみであっても、治療を行わないと将来的に音樂鳴りなどの耳鳴りを発症する可能性があります。自覚症状が一方だけでも、他の症状を併発させないために、症状が軽いうちに早く治療を始めましょう。

3.音樂鳴りの原因

音樂鳴りの原因は、まだはっきりと解明されたわけではありませんが、可能性として考えられるものがいくつかあります。

音樂鳴りは、耳鳴りの一種で、存在しない音が聞こえるのですから、聴力に関する機能に障害が発生していると考えられます。内耳、聴覚神経、脳内の聴覚野、大脳皮質などに何らかの異常が生じているのです。

音樂鳴りの原因として、耳に関する疾患、外傷、脳血管障害、ストレスなどが考えられますが、原因が複数である可能性もあります。原因が複数あると診断がむずかしくなります。

音樂鳴りなど耳鳴りは、難聴が原因で起こりやすいと言われています。難聴で音が聞こえにくくなると、脳が感度を上げ、音を聞き取ろうとします。感度が上がりすぎると、必要ない音まで拾ってしまい、耳鳴りとして感じるようになります。

音樂鳴りの原因が大きな病気の可能性もあるので、検査を受け、早めに治療を開始することが大切です。特に、脳血管障害がある場合は、命に関わることもありますので緊急対応をしなければなりません。また、突発性難聴の場合は、48時間以内の対応が予後を左右するので、早めの対応が必要です。

ストレスや疲労で脳が興奮状態にあるときに、不要な音まで拾って音樂鳴りとして感じることもあります。日常生活の中にも原因となるものがあります。生活リズムの乱れ、偏った食事、過度の飲酒、喫煙、カラーリング剤、除草剤なども、個人の体質や体調、使用量によって音樂鳴りなどの耳鳴りを起こす原因となることがあります。

4.音樂鳴りの治療

音樂鳴りの治療は、関連性の深い難聴の治療を基本とします。音樂鳴りの原因となっている疾患の治療と、苦痛を取り除く対症療法があります。

音樂鳴りの原因となる疾患が、脳血管障害や突発性難聴の場合は、命や予後に関わることがありますので、早急な処置が必要です。

また、音樂鳴りは放置すると、進行して聞こえる音が次第に大きくなり、ストレスが強くなります。症状が重くならないうちに音樂鳴りの治療を始めましょう。

1)薬物療法

ビタミン剤(ビタミンB12)や利尿剤で内耳の血行を促進します。心因性の場合は抗うつ剤を使用することもあります。音樂鳴りの症状が治まるまでに時間がかかりますので、気長に続ける必要があります。

2)補聴器

難聴がある場合、聞こえない音を拾おうとして脳が感度を上げるために音樂鳴りなどの耳鳴りが生じます。補聴器によって難聴が改善すれば、音樂鳴りも治まる可能性があります。

(3)マッサージ・鍼(はり)治療

耳の周辺にあるツボを刺激し、首や肩のコリを改善することでリラックスさせ、音樂鳴りを改善することができます。

(4)漢方薬

さまざまな治療法を行っても改善されない場合、漢方薬が役立つケースもあります。漢方薬は体質を整えることで症状を改善していきます。ただ、病院の薬を飲んでいる場合は、飲み合わせに注意しなければなりませんので、医師や薬剤師に相談しましょう。

音樂鳴りの治療を行う際、緊急性のある疾患の場合はそちらの治療を優先しますが、命に関わらない場合はまず苦痛を取り除くことから始めます。さらに、上記のような治療法とともに、日常生活の改善も心がけましょう。

規則正しい生活リズム、上質の睡眠、バランスの良い食事、禁煙など、生活習慣を見直すことが症状の改善につながります。家庭で優しい音を聞くなど、耳の症状にばかり意識が向かないようにすることも、過度な不安を取り除くことになり、改善ヘの手助けとなります。

また、家族や友人に音樂鳴りの症状があることを伝えておきましょう。症状について周囲に理解してもらっているという安心感も、治療をサポートします。

音樂鳴りは、実際にない音を、脳が音楽や何かの音と誤認することによって起こる症状です。原因を突き止め、早期に適切な治療を行うことで、音樂鳴りは改善することができます。どうぞあきらめないでください。